午後8時頃、病院に到着した。
診察台で診てもらうと子宮口は3センチ。
前回、促進剤を3日使い、吸引分娩まで経験した私からすると、
「まだ3センチか」
という気持ちだった。
前回は子宮口5センチまでくるのに2日かかっている。
もはや出産というより長距離走である。
そのまま病室へ案内された。
今回の出産では、定期健診の頃から担当してくれていた助産師学生さんが付き添ってくれることになっていた。
今後何度も登場するので、ここではS子ちゃんと呼ぶことにする。
夜8時だったのに、S子ちゃんも病院へ来てくれた。
私は前回、促進剤3日コースの女である。
もし今回も長引いたら申し訳ないなと思った。
事前に連絡先を知っていたら、
「今から病院行くから、お風呂入っておいで!」
と言いたかったくらいだ。
今回は夫の立ち会いもなく、里帰り出産もしなかった。
だからS子ちゃんが来てくれたことが本当に心強かった。
まだ子宮口3センチだったので、
「進んだらまた来ますね」
と言ってS子ちゃんは寮へ帰っていった。
そして私は、一人病室に取り残された。
前回は促進剤を使っていたため、助産師さんがずっとそばにいてくれた。
さらに溶連菌(GBS)陽性だったので、出産中も点滴がついていた。
今回はGBS検査が陰性。
点滴がない。
これが本当にありがたかった。
前回は陣痛だけでも大変なのに、点滴まで気にしながらだったのだ。
病室で一人、軽い痛みに耐える。
前回の経験から、
「長引くかもしれない。体力を温存しよう」
と思い、眠れるうちに寝ておこうとした。
しかし結局眠れなかった。
午後10時頃には10分間隔でお腹の張りと痛みがやってきた。
重い生理痛のような痛みである。
だんだん強くなってきた。
とはいえ前回に比べればまだ序の口だ。
私は一人静かに耐えていた。
S子ちゃんから、
「陣痛中はあぐらの姿勢がいいですよ」
と教わっていた。
どうせ痛くなるなら、さっさと進んでほしい。
痛みが来るたびに積極的にあぐらをかいた。
早く来い、強い陣痛。
そんな気持ちだった。
深夜1時頃。
恥骨が痛い。
前回にはなかった痛みだった。
なんだか赤ちゃんが下がってきているのがわかる。
たぶん頭が恥骨に当たっている。
いや、そこじゃないぞ。
もう少し下だぞ。
そう思いながら体勢を変えていた。
しかしこれが結構痛い。
我慢できなくなりナースコールを押した。
診てもらうと、
なんと子宮口5センチ。
前回はここまで2日かかっている。
私は思った。
二人目、めちゃくちゃ早いかもしれない。
助産師さんからも、
「経産婦さんだからこのまま進むかもね」
と言われ、そのまま分娩室へ移動した。
前回、分娩台にたどり着いたのは3日目である。
今回はたった数時間。
感動した。
S子ちゃんにも連絡が入り、深夜1時にもかかわらず駆けつけてくれた。
腰をさすってくれたり、呼吸法を教えてくれたり。
本当に助けられた。
朝4時頃には子宮口7センチ。
この頃になるとかなり痛かったので記憶が曖昧だ。
ただ、トイレへ行くと陣痛が強くなる気がして何度も通っていた。
行っては崩れ落ちる。
行っては崩れ落ちる。
そんなことを繰り返していた。
朝6時頃。
ついに声を出さないと耐えられなくなった。
しかし陣痛の間隔は10分程度。
痛い。
めちゃくちゃ痛い。
なのに間隔が縮まらない。
助産師さんから言われた。
「陣痛弱いタイプだね〜」
弱くない。
十分痛い。
私は心の中で全力で反論した。
だが確かに間隔は長い。
そして前回も促進剤から吸引分娩だった。
「今回も促進剤かな〜」
と言われた時、
私はもう観念していた。
早く打ってくれ。
頼むから打ってくれ。
そんな気持ちだった。
しかし促進剤は9時から。
7時から9時までの2時間、
私は7〜10分間隔の陣痛に耐え続けた。
そして午前9時。
ついに促進剤投与。
効果はてきめんだった。
痛みの間隔が一気に縮まった。
そして子宮口9センチになった頃。
助産師さんから声をかけられた。
「今日、看護学生さんが見学に来ていますので入りますね」
私はそれどころではない。
「あ〜はい……」
と返事をした。
すると、
ゾロゾロゾロゾロ……。
看護学生さんが次々と入ってきた。
その時ふと思い出した。
少し前に見た、辻希美さんの出産動画である。
家族5人に加え、じいじばあばまで立ち会っていた。
だから出産というのは意外と大人数で見守るものなのかもしれない。
それでも。
その時の私の感想は一つだった。
「多すぎだろ。」
しかも私は、
「私が産み終わらないと、この子たち帰れないのでは?」
という謎の心配までしていた。
そんなことを考えていると、
突然、
パーーーーーン!!
と音がした。
スプラッシュマウンテンかと思った。
破水だった。
こんなに勢いよく出るのかと驚いた。
破水すると一気に陣痛が進んだ。
「いきんでいいよ〜!」
先生もやってきた。
1回。
2回。
3回。
出ない。
ただ、前回感じられなかった感覚があった。
赤ちゃんが下がってくる。
ぬの〜。
そう。
ニュル〜ではない。
ぬの〜(重め)である。
4回目くらいで頭が挟まった感覚があった。
しかしそこで陣痛が止まった。
私は絶叫した。
「挟まってるんですけど〜〜〜〜!!どうすればいいですか〜〜〜〜!!」
先生は冷静だった。
「大丈夫。うまくいきめてるから次で産みましょう」
そして次の陣痛。
私は全力でいきんだ。
「おぎゃああああ!!」
産まれた。
産まれた!!
産まれた!!!!!!
自分で産んだ!!!!!!!
前回は促進剤3日。
吸引分娩。
大量出血。
出産した感覚なんてなかった。
だから今回は違った。
ちゃんと自分で産んだ感覚があった。
達成感がすごかった。
母が言っていた。
「畜産の喜びだ」
と。
その意味が少しわかった気がした。
息子の顔は、生まれた瞬間の娘にそっくりだった。
ああ。
私と夫の子どもは、どう転んでもこの顔になるんだな。
それが正直な感想だった。
前回は大量出血で薬を使われ、そのまま眠ってしまった。
だから今回は息子をたくさん抱っこできた。
それが本当に嬉しかった。
ただし。
出産は終わっていなかった。
胎盤を出す処置が待っていたのである。
お腹を氷で冷やされる。
ぐいぐい押される。
痛い。
ひたすら痛い。
陣痛の次に痛かった。
私は、
「薬で眠らせてくれませんか?」
とお願いした。
断られた。
そうして胎盤が出され、
会陰切開の縫合が始まった。
おそらく縫っていたのは若い先生だった。
ベテランの先生が横で指示を出している。
私の大事なところなのに。
そう思ったが、どうしようもなかった。
こうして息子は、
助産師学生さん、
看護学生さんたち、
助産師さん、
先生方、
たくさんの人に見守られながら生まれた。
そして私は思った。
息子は生まれた瞬間から、
医療教育の発展に貢献した男である。
本当にお疲れさま、私。
そしてありがとう、息子。❤️
※次回は「産後編」です。促進剤3日コースだった一人目との違い、産後の回復、そして二人育児のスタートについて書きたいと思います。
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